「哲学のすすめ」岩崎武雄
著者:岩崎武雄
1913年東京に生まれる。東京大学文学部哲学科を卒業。西洋哲学専攻。東京大学名誉教授、青山学院大学教授を歴任。カント、ヘーゲルを中心に近代哲学を研究。1967年没。著書としては『西洋哲学史』『弁証法』『カント』など数多く、現代新書にも『正しく考えるために』がある。
- 誰でも哲学をもっている
- 科学の限界はなにか
- 哲学と科学は対立するか
- 哲学は個人生活をどう規定するか
- 哲学は社会的意義をもつか
- 哲学は現実に対して力をもつか
- 科学の基礎にも哲学がある
- 人間の有限性の自覚
- 感想
誰でも哲学をもっている
哲学は必然的に生じてくるものである。人間は、自由によって行為している以上、どうしても行為を選びその生き方を決定する根本的な考え方を持たないわけにはいかない。この考え方がいわゆる人生観ないし世界観というものである。そしてこの人生観・世界観がすなわち哲学に他ならない。
科学の限界はなにか
科学は人生観を与えることができない。事実の問題は「いかにあるか」、価値の問題は「いかにあるべきか」とうことである。単に事実を記述するというつつしみ深い態度によって成り立っている科学は、われわれの生活を規定する人生観に置いて問題となる価値判断を導くことができない。
哲学と科学は対立するか
哲学の与えるものは価値判断の原理であり、科学の与えるものは事実についての知識である。このことがはっきり理解されれば、両者が相対立するものであるどころか、両者のうちいずれかを欠いても、われわれは具体的にどう行動して良いのかわからなくなる。
哲学は個人生活をどう規定するか
幸福感の根底に哲学がある。幸福は、わかりきったもののように見えながら、実は全く曖昧なものであり、人によって異なるものである。だから、何が幸福なのかと反省し続けなければならい。そうしなければ、享楽の対象が無数に存在する現代に巻き込まれ、快楽を幸福と決めかかってしまう。
哲学は社会的意義をもつか
哲学は社会生活を規定、政治的根底にもある。われわれが真に立派な民主主義を実現しようとするならば、われわれ一人一人が立派な世界観を持つことが何よりも重要となる。要するに、われわれがどういう哲学をもつかによって、社会は変わってゆくのである。
哲学は現実に対して力をもつか
現実は過去の歴史の積み重ねの上に成立している。われわれが、この現実のもつ歴史的重みを無視して、ただ頭の中で考えた思想で割り切ろうとすれば、それはまったく非現実的な態度であると言わねばならない。
そのように現実の重みを凝視すると同時に、現実をいかなる方向に導いてゆくべきかという理念をもつべきではないだろうか。その理念を与えるものが、世界観・哲学に他ならない。
科学の基礎にも哲学がある
人文科学や社会科学において、無数の事実を全てそのまま捉えるということはできない。事実の中から学問的研究にとって重要であるかどうかで事実を選び出している。「重要である」と判断するということは、一つの価値判断ではないのだろうか。そうすれば、事実判断もその根底において、価値判断というものに結びついてくる。
人間の有限性の自覚
人間が経験を超えたものを認識することができると考えられていた形而上学から、経験によって示される現象の姿を探求する科学への移り変わりという思想史の展開は、人間の有限性の自覚の進展である。
科学が人間の有限性の自覚によって成り立っているということを忘れなければ、人間のもつ生命に見失われた価値の基準というものを再び見いだすことができるのではないだろうか。
感想
僕の尊敬する方が哲学について語られてて、その言葉にすごく納得しています。「哲学書を読むことは、インプットだけじゃなく、自分の考えや生き方を照らし合わせて対話することだ。インプットだけじゃなく同時にアウトプットもしながら読み進めることができる。」みたいな感じのことを言われてたと思うw
確かに!!ってなって。。
実際自分もこの本読みながら、この内容に対しては自分はどう考えてるっけ?って知らないうちに自分の考えとその内容とを擦り合わせていました。
ビジネス関係とか実用書とか読むのもいいけど、時々哲学書読んで、過去の自分を振り返って、未来の自分の生き方を考え直すことって大事だなと、毎日朝1時間本読みながら思ってました笑
満員の通勤電車の中、目の前でイライラしてるサラリーマンに本のタイトルを見せつけるかのようにこの本を読むのは爽快でしたね。