「手書きの戦略論」磯部光毅
著者:磯部光毅
磯部光毅事務所アカウントプラナー。1972年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、1997年博報堂入社。ストラテジックプランニング局を経て、制作局(コピーライター)に転属。2007年独立し、磯部光毅事務所設立。受賞歴にニューヨークフェスティバルズAME賞グランプリ、ACC CMフェスティバルME賞メダリストなど
ポジショニング論
ポジショニング論は、「違い」が人を動かすと考える戦略論。そもそも、ポジショニングとは、顧客のニーズを汲み取りながらお客さんの頭の中で、競合と違った位置付けを得ること。
ポジショニングをする上で、自ブランドにとって有利に働く競争軸を発見することが大切。ライバル商品との対立構造で立案するとクリアな戦略が作りやすい。
自ブランドを魅力的に見せる2つの方法
- オーバーテイク型
- 既存の価値軸の中で競合に勝る違いをつくる
- カテゴリーメイク型
- 全く新しい価値軸を打ち立てて違いをつくる
強み
- 頭の中の位置付けなので、多様な「違い」の作り方が可能
- お客さんの商品購買に直結する選択肢を提示できる
- 商品の特徴や機能ベネフィットに立脚している
- 広告などで訴求しやすい
弱み
- 市場が成熟し類似品が増えると「違い」の設定が困難
- お客さんの関心が低いカテゴリーだと「違い」を訴求しても響かない
ブランド論
ブランド論とは、「らしさ」の記憶が人を動かすと考える戦略論。その記憶をどのようにお客さんの頭の中に連想構造として残すかがポイント。
ブランドはロジックとマジック、すなわち論理と感情・感覚の両面からつくり出される。
プランニングに必要な4つのポイント
- 固定的な「ブランド」でなく動的な「ブランディング」
- ブランドの中心は、ミッションとビジョン
- 「体験」と「接点」の視点から見直す
- ブランドパーソナリティをしっかり固める
強み
- お客さんの商品・サービスに対する「価値」「好意」「絆」を醸成できる
- プレミアムな価値維持に貢献できる
- 長期的な反復購買を促すことができる
弱み
- 記憶や感情に関わるもので、効果を可視化、数値化しづらい
- 長期記憶に残すことを主眼に置いているので、必ずしも即効性が高くない
- 直接的な購買歓喜に繋がるとは限らない
アカウントプランニング論
アカウントプランニング論とは、「深層心理」が人を動かすと考える戦略論。消費者の心理や行動を理解し、広告開発プロセスに取り込む手法。
インサイト(深層心理)を見つけるのは、データや事象を見たときの「違和感」が出発点。
強み
- 消費者意識が反映された戦略およびクリエイティブが生まれやすい
- インサイトは低関与の人、広告を信じない人の心を動かす力がある
- クリエイティブブリーフという1枚の設計図にまとめることで、戦略のブレをなくすことができる
弱み
ダイレクト論
ダイレクト論とは、「反応」の喚起が人を動かすという戦略論。お客さんの反応を獲得しながら関係を深め、LTV(顧客生涯価値)を高めることを目指す。
強み
- 顕在顧客獲得に強く、売上に直結する
- 即効性がある
- 投資対効果が可視化できる
- 精緻なターゲティングかできる
- 複数の広告展開を同時に行える
- PDCAを早く回せる
弱み
- 潜在顧客へのアプローチは苦手
- 効率を求めすぎて、短期的な視点に陥りやすい
- 比較が容易なネット上では、差別化が十分でないと価格競争になりやすい
- 記憶にアプローチしないので、価値づくり、ブランドづくりが難しい
IMC論
IMC論とは、「接点」の統合が人を動かすと考える戦略論。IMCとは、統合マーケティングコミュニケーション(Integrated Marketing Communication)。複数の接点をつなぎ、接点ごとに最適なメッセージを出し分けることが大切。
カスタマージャーニーは、お客さん一人一人がブランドと接点を持つなか、どう行動や意識が変遷するかを表すもの。
強み
- 複数接点、複数メッセージを繋げることでお客さんとの関係強化が可能
- KPIなどの中間指標で効果が測れる
弱み
- 接点づくりに偏重して、そこで具体的に何を伝え、どう気持ちを動かすのかの視点が弱い
- 接点を細かく分けすぎることで発想や企画が小さくなる
- KPIの運用次第で、数量化しやすいものに偏重したり、手段が目的化する危険がある
エンゲージメント論
エンゲージメント論とは、「関与」が人を動かす戦略論。エンゲージメントとは、お客さんが能動的に関与することで生まれる、心理的な繋がり。
2種類のエンゲージメント法
- キャンペーンセントリック型
- 短期間で瞬発力を持って、多くの人が参加したくなる施策
- オールウェイズオン型
- ユーザーに寄り添い、中長期的な視点でのファン育成を目指す施策
強み
- 広くゆるい関与は、情報伝達を容易にし、なんとなく買いに寄与する
- 深い関与は、口コミの発信源となり、ファンの熱い応援につながる
- 比較的予算がかからない
弱み
- 即効性がない
- 継続的活動なので手間がかかることが多い
- 効果の数値化が難しい
クチコミ論
クチコミ論とは、情報の「人づて」が人を動かすという戦略論。クチコミを通じて、「ファンづくり」と「ムーブメントづくり」を目指す。
クチコミは「共感」「信頼」「憧れ」によって加速する。
SNSで拡散されやすいネタ
- 具体的に役立つ「機能的」なネタ
- 自己顕示欲をくすぐる「社会的」なネタ
- 人を揺さぶる「感情的」なネタ
強み
- 情報の量、信頼性、接触する順番の点で、他メディアを凌駕し始めている
- 低予算で広く拡散する可能性がある
弱み
- 情報の自走が基本なので、アンコントローラブルな部分が多い
- 戦略論としてまだ確立していない
- 効果測定が難しい
7つの戦略論を俯瞰する
戦略論を7つに分けたが、全ての戦略論が正しく、かつ重要である。7つのコミュニケーション戦略は「人を動かす」という同じゴールを目指す上での手段である。
今後、マーケター / プランナーは7つの戦略論を組み合わせ新しいコミュニケーションモデルを発明しなければならない。
発明のキーワードは「シームレス化」
- 行動データがシームレス化
- モノと広告がシームレス化
- テレビとネットがシームレス化
- 販売がシームレス化
- 人とコンピュータがシームレス化
感想
この本を読んで、広告のマーケター、プランナーへの考えが変わった。というのも、
広告の戦略って、どうやって商品やサービスを消費者に販売促進させれるかを考えるっていうイメージだったけど、論理だけでなく感情にも寄り添って、人の心・行動をどう動かすかを考える、面白い業種だなと思った。
その一方で、全てのモノがインターネットに繋がれて、人とモノの接点に毎回広告が出るような時代が来ると、1日で僕に入ってくる情報量も大量になるわけで、個人として情報の正しい取捨選択が必要だし、マーケターとしては、本当にその人に広告として必要な情報を届けることが必要になってくると思った。
クチコミ論の章で、役に立つネタがSNSでシェアされると書いてあったんで、このブックレポートも1記事ごとの質あげてもっとシェアされるように頑張ります!
でも、わかりやすく書こうと思うと、(みなさんお気づきでしょうが)文字数も最近増えちゃってて、、なので「5分で読めないんやけど!」というコメントが来ないうちに頑張りますw